「プレゼンテーション Zen」(ガー・レイノルズ)読了

ずっと積読状態になっていましたが、週末にスタバでざざっと読みました。
もともとは友人が気になっている本ということで*1、ちょうどその頃、川崎先生の「プレゼンテーションの極意」も読んでたりで、私も少し興味があったので買ったのがきっかけです。
本書は「プレゼンテーションの極意」と同様、プレゼンテーションのメソッドについて綴った本ではなく、プレゼンテーションに対するアプローチに関して提案している本です。
とは言え、読み終わってみて、ある種の技法的なところは結構出てきたように思います。

ざっくりとした内容

一貫しているのは、スライドソフトウェア(PowerPointやKeynote)の機能に踊らされたプレゼンテーションは良くないぜっていうこと。ということで、まぁ「プレゼンテーションの極意」とか、他の人もよく言うことで、またこの手の話ねという感じでした。
この本はデザイナーというよりもビジネスマン・営業の人たち向けの本という様な雰囲気も感じたので、そういう方々にとっては刺激的な本なのかもしれません。
著者は日本の文化について大変興味があるようで、本書はタイトルにも使われているように「禅」の考え方をテーマに、プレゼンテーションのアプローチについて考えている。「初心」「簡素(侘び)」「渋み(寂び)」などを取り上げて、シンプルでクリエイティブなスライドを作ることを訴えていて、アメリカ人受けしそうな本だなぁという偏見にも似た感想を持ったのが正直なところです。
でも、デザイナーでもプレゼンがいまいちな人はいるので、参考にはなると思いますよ。少なくとも今よりはきっと良くなる、はず(そうであれ)。
本書の最後の方では、いくつかのスライドメソッド例が紹介されてるような部分があったのですが、その中に「高橋メソッド」も載っていたのは、何だかうれしくなりました。
高橋メソッドは一度はやってみたいけど、「あぁ、それ高橋メソッドね」と言われるのが、オリジナルじゃないんだと言われてるみたいで嫌なので、なかなかやりづらい手法。部分部分で取り入れたいですね。

個人的に気になったところ

プレゼンテーションって発表会じゃないんですよね。聴衆がみんな自分と同じ意見ならやる必要はない。説得して、共感してもらうためにするんだ。
そんなの当たり前、という声も聞こえてきそうですが、ちゃんとそのことを全体に通じて作られたプレゼンってちゃんとやっているだろうか。
この本で自分にとって結構為になったと思ったのは、「ストーリーを作る」ということと「引用句を利用する」ということ。
ビジュアルについて気を遣うと言うことは本当に良く考えていたようにも思うのですが、ストーリーをちゃんと作れていたかというと、私は少し自信がないです。
もちろん、構成を考えて行くに当って大筋の流れを作ったり、キーワードをあげて落としたりということはしていたのですが、せいぜいその程度。まだまだビジュアルに気を取られすぎていたように思います。
単純明快で、より具体性の感じられるメッセージをひとつの軸として、それを伝えるための物語をプレゼンテーションで演出していく方法について、これからはもう少し考えてみようと思います。
引用句を使うという手法は、今までの私を振り返ってもあまり意識して利用していなかったように思います。
本書は所々で偉人の言葉の引用やら、実際にあった話などを絡ませながら話を進めていくのですが、「引用句を利用する」という手法が効果的なことが本全体に表されているようで、非常に良かったように思います。

本書の中で紹介されている本

本書の中ではいくつかの本からの引用や紹介がされているのですが、これが個人的には本書よりも読みたい気がしたので、いくつか紹介します。

『ハイ・コンセプト:「新しいこと」を考え出す人の時代』
(ダニエル・ピンク)

「ハイ・コンセプト(の時代)には、パターンやチャンスを見いだす能力、芸術的で情感あふれる美を創造する能力、説得力のある物語を生み出す能力」が重要であるという内容の本らしい。
データや情報などの論理的思考は十分条件ではなく必要条件だ。データの中から最も訴えたいメッセージとなる部分を紡ぎ出し、そこから背景や展望を見いだすことが重要となる。
「プレゼンテーション Zen」の背景にもなった本らしい。読みやすそうなので近いうちに読んでみよう。

「シンプリシティの法則」(ジョン・マエダ)

本書の中では「制約の中で仕事をすると言うこと」という章で紹介されている。
ジョン・マエダの「切迫感と創造的精神は連動している」という言葉は、デザイナーにとって常な言葉であるとは思うが、その関連性について改めて考え直してみたいとも思う。

「ノンデザイナーズ・デザインブック」
(ロビン・ウィリアムズ)

デザインの最も基本的な心得について書かれている本のようだが、何となくタイトルが気になったのであげておいた。

日本のこと

先ほども触れたように、本書には所々に「禅」を取り入れた考えを用いている。
「わびさび」とは何かという問いに自分の考えをふまえた上で答えることができる人はどれくらいいるだろうか。
ありきたりではあるけれど、日本人として日本人が考えてきたことについて、もっとしっかり知っておきたいと今回の本で間接的に感じたように思う。
まだまだ考え足らず、知恵足らずです。


散文すみません。


*1:結構そういうパターンが多いような気もする。「傷はぜったい消毒するな」もそういうところあるし。