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サイトサーチアナリティクス 読了

開発

サイトサーチアナリティクス  アクセス解析とUXによるウェブサイトの分析・改善手法

サイトサーチアナリティクス アクセス解析とUXによるウェブサイトの分析・改善手法

副題には「アクセス解析とUXによるウェブサイトの分析・改善手法」とありますが、その導入のためのサイトサーチアナリティクス(サイト内検索解析)の解説という本です。簡易的なものから自社で構築したものなどサイト内を検索するシステムは多くの商業サイトやブログ、イントラネット、企業サイト、Webサービスなどに今もあると思います。この本はそのサイト内検索解析「SSA」を主題としてログデータ解析とUXによる統合的な改善につなげようというものだと思います。原著はIAで有名なLouis Rosenfeldで、翻訳にはUX TOKYOの方々が関わっている本です。

サイト内の検索改善で思い出すのはクックパッドの検索改善の話しで、3年前に読んだ本のこととかを思い出したりしました。そのころ私は勤めていた会社の運営している、地域のお店検索サイトのシステム開発や機能開発をしていました。読んだ本の影響もあって検索ログを残す仕組みや解析するツールを独自に開発していましたね。そうは言ってもエンジニアリングは見よう見まねでやっていたので、愚直な設計で今見ても恥ずかしい感じだと思いますが。
携帯のGPSを使って位置情報からお店を探す機能を作っていたので、ログを残す仕組みを導入して分析したりしていました。地方なのでどうしても駅周辺などにお店が偏ってしまい、場所によっては検索してもお店が出てこないということもありました。お店が0件だと単に返すのも良くないので、どのように改善できるだろうかと考えたりしていましたね。そのころはまだ検索離脱率のような少し専門的なことは知りませんでしたから、ログを元に一つ一つユーザーにとって適切な結果が返せているかを調べていたように思います。

そもそもなぜ本書がSSA(サイト内検索)を主題としているかといえば、サイト内検索のログデータは他のアクセス解析などとは違うユーザーの意志の断片があるからです。サイト内検索のログにはユーザーの明確な意思が介在して使われるので、そのサイトで何かを知ろうとしたり探そうとしたときにユーザーがどのように考えていたかということが、検索ワードという断片には含まれているとうことですね。

代表的な分析方法

本書ではSSAについていくつかの解析方法を紹介しています。

  • パターン分析
  • 失敗分析
  • セッション分析
  • オーディエンス分析
  • ゴールベース分析

パターン分析はカードソートなどで検索ワードをグルーピングやクラスタリングして、その特徴やパターンから全体としてユーザーがサイトに何を求めているのかが理解できそうです。また、時系列データとして見れば、一日の間の時間帯や季節性といった観点からの特徴も見つけ出せるかもしれません。この時間にこういう情報を出しておいたほうが良い!とか今の季節はこの情報をトピックに持ってくるのが良い!とかを分析したりするのも良いということですね。

失敗分析は検索機能でうまく機能していない部分を改善するための分析で、場合によってはユーザーの満足度が大きく向上する可能性がありそうですね。具体的には結果ゼロを返す検索パターンの解析や検索離脱率の高いワードの分析と改善、検索結果から求めている結果を得られない場合などの改善をするものです。
以前、とあるTV番組である経営者の方も話していましたが、ユーザー調査や満足度調査からそのサービスがどれくらい良いのかを調べてもあまり価値にはならなかったりするんですよね。それよりもユーザーが抱えている不満や問題を解決して、それが別の数字に反映されて改善されることのほうが重要なようにも感じます。

セッション分析はある特定のセッションに注目して時系列に連続したログを分析し、ユーザーの意図や行動を理解しようというものですね。他の分析と比べるとかなり断片的ではありますが、より具体的でもありそうです。
本書でも触れていましたが、セッション分析にかぎらずユーザーの行動ログを元にしたデータ解析には個人情報保護の観点から少し注意が必要そうですね。

ほかの分析方法がボトムアップ型であるのにたいして、トップダウン型の分析がゴールベース分析だとしています。ここでいうゴールとはユーザーのゴールではなく、サービス提供者側のゴールを指しています。つまり、ECサイトなどでは製品やサービスの購入、コンテンツサイトでは滞在時間を増やすなどがゴールと考えられるようです。ゴールベース分析ではこういったKPIとなる指標とSSAの指標を関連付けて分析する方法を考えます。この章の最後には「Marko Hurstによる検索関連指標のリスト」というものが掲載されていましたが、わかりやすくまとまっていて有用そうでした。

データ解析とUX

冒頭にも書いたとおり、SSAをきっかけにデータ解析とUXを結びつけて思考していくことを最終的な目的にしていて、そのようにあるべきだと最後の章で書かれています。データ解析は数字から定量的で適切な事実と改善するきっかけやポイントを導き出すことはできますが、なぜそのようなことが起こっているのかという部分にまでは深く入り込んでいません。なので「なぜ」の部分をUXの観点から分析し、それぞれを統合して考えることでより良い改善ができるとしています。また逆に考えれば、定性的なデータを元にした問題可能性をログデータの解析によって数字で裏付けることもできると考えられます(しかし、この場合は都合の良い数字を作り出しやすいという意味で、いかがなものかと思う時もありそうですが)。

去年はIAやHCD関係のイベントや勉強会にいくつか参加したりしていましたが、定量的データと定性的データを組み合わせるという話しは常にありましたし、やはり有効な方法であるように思います。本書の最後のメッセージにあるように、プロジェクトにおける機能やデザインの改善はリリースされた時点で終了することが多いですが、リリース後の評価まで含めてひとつのタスク・プロセスと考える必要があるように思います。常に「改善!改善!」と機能を増やしたりデザインを変えてみては、すぐ次の開発に移って全体の数字を見ているだけのようなプロセスでは正しく「改善!」されているとは言えないでしょう。定量的なデータとは違い、定性的なデータにはある種の主観的な思考・仮説が間違っている可能性もあるわけです。その場合は改めてデータを見直し、ヒントを元にインタビューや行動観察などで問題の発見・改善・評価へとつなげていくタスク・プロセスが良いように思います。

関連する本など

ユーザエクスペリエンスのためのストーリーテリングに続くUX KYOTOが関係している本ですが、こちらの方がわりと読みやすかったように思います。UX KYOTOの主催の方々ともお話したときに、「このような分野はまだまだ外国の方がずっと進んでいるので、今はできるだけたくさんの良本を翻訳していきたい」とおっしゃっていました。なので、今後も少し楽しみにしておこうと思っています。

ユーザエクスペリエンスのためのストーリーテリング -よりよいデザインを生み出すストーリーの作り方と伝え方 -

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去年はHCDに関する開発の本などもいくつか読んだりしていました。中でもアジャイル・ユーザビリティは普段の業務に手法を取り込む導入として非常に良いように思いました。「アジャイル」とあるようにできるだけ簡易に取り組めるように書かれていますし、重要な部分もわかりやすく網羅されていたように思いました。それにともなってインタビューに関する本もいくつか読んだりしていましたが、その中ではマーケティング・インタビューという本がまずまず良かったように思います。具体的な事例や場合に応じたインタビュー手法などが書かれていたので参考になりました。ご興味があれば参考までに。

アジャイル・ユーザビリティ ―ユーザエクスペリエンスのためのDIYテスティング―

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マーケティング・インタビュー 問題解決のヒントを「聞き出す」技術

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