連載|VenalityとHonestyのあいだに

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今の時代は決まりきった職種に限らず、ビジネス、テクノロジー、デザインといった横断的なドメイン知識が求められるという。

これはある種、機械作業的な労働に囚われていた多くの時間が、機械化・自動化などの移行によって、ようやく本当の意味での人間的な仕事のための時間として開放された結果とも言えるように思う。

デザイナにとって「テクノロジー」とは、思い描いたビジョンを現実のものとして具現化する手段の重要なパーツであり、「ビジネス」とはそれを持続可能にするための計画的手段だと思う。

そういう意味でこれら2つの要素は、持続的によりよい未来を創るという上では欠かすことができないものだと思う。

ただ、このプロジェクト(プロダクト)をなんとか成功に導きたいと思うあまり、数値的な指標や経済的な目標に対して近視眼的な迷路に迷い込むことがあるかもしれない。

斯く言う私も、そうしたVenality(打算さ)をそれと知りながら、突き進んだこともあり、このときに私の心は大変に疲弊したのを覚えている。

それからというもの、私はHonesty(正直さ)を失わないことを決意として固めている。このHonestyというのは他の誰かにとっても、もちろん自分自身にとってもである。

ときに私のその決意は、それが強すぎるあまり、持続可能性のための「ビジネス」の足枷になることもあるかもしれない。

ただし、それらは相反するものではなく、たとえ遠回りであったとしても必ず両立し得るものだと確信している。大切なのは、思考停止せず、常に考え続け、もがき続けることだ。

そして誠実さや正直さによって浮かび上がってくる「心」こそが、真の意味での持続可能な豊かさを結実するのだと信じている。

君が涙のときには 僕はポプラの枝になる