poem

連載|滑り台

何か新しい経験したいと思うことは多くの人にあるかもしれない。 そんな想いは淡々と過ぎていく日常の中で、波打ち際の岩のように削られて、いつかは海の中に消えていってしまう。 そういうのは待っていても訪れないことのほうが多い。 もちろんそのことを考…

連載|秘密基地

大学時代の半分はお菓子作りだけをしていた。 毎日ではなかったが、朝から出勤して夜まできっちりやって帰るという感じだったからほとんど普通に働いているようなもんだった。 1、2年で必要な単位はほぼほぼ取り終えていたこともあって、それ以降は必修単位…

連載|深淵の街

日付はすでに変わっていた。 暖かい布団でまどろんでいた私は、まだまだ肌寒い暗い闇へと足早に出かけたのだ。 月も出ない夜と言えど、街中は街灯の明かりで静かに様子を伝えている。 いつものT字路に差し掛かり、黒いバンが近づいてきた。 そこで普段は不気…

連載|有彩色

その子の手元には16色の入ったクレヨンがある。 赤に黄色に青に緑に、茶色に紫色に灰色に黒に白に。 母親は鮮やかな色で描いてほしいと願うかもしれない。 空は碧く、陽の沈む頃にはやがて赤く染まっていくだろう。 その青から緋色に滑るように変化する空を…

連載|絡みあった蔓

夢は絶対に持ち続けたほうが良いのか。 これに対して否定しようという人は多くないと思うが、私のような面倒くさい人間は否定もしようというものなのだ。 例えば、その人の夢が圧倒的な性能を持つ飛行機を作ることだとして、それが戦争に利用されるとわかっ…

連載|猫の正義

正義について考え、ずっと深く認識するようになったのは、機動戦士ガンダムを観てからで。 マイケル・サンデル氏の講義が日本のメディアで流れるずっと前のことだ。 CSSのように、世界には相対軸も絶対軸もあると考え語っていた、若かりし頃のやんちゃで荒削…

連載|日記

ここ何年か、インターネットは息苦しくなってしまった。 という話をよく友人とする。 これは単に規制がどうのという話ではなく、頑張っているのを求められている感じがするからだろう。 人に見られることが前提になり、それが進んで人に見られて承認を得られ…

連載|中華屋の隣の猫

いつものように出社し、毎週お決まりの小さな中華屋でランチをした。 最近は数年前よりも人気があって、平日のお昼時には外で少しちょっと待つくらいの繁盛ぶりだ。 永い永い冬がようやっと明けようとしているのか、少し日差しが暖かい。 中華屋の隣の空き地…

連載|The guild in this World

デジタル技術やインターネットを中心とした情報網の発達やコミュニケーションの多様化といった第三次産業革命は、今真っ只中であり、誰もそれの行き着く答えを知らない。歴史的な事件や出来事というのは往々にして過去のものにラベリングされるのが常である…

連載|地上の落花星

ピーナッツを茹でて食べるのはおかしいですか? 柿ピーやバターピーナッツといったおつまみなどでおなじみのピーナッツですが、静岡県や千葉県などではピーナッツ(落花生)を茹でて食べるという食文化があり、これがまた枝豆のようにお酒のおつまみにぴった…

連載|VenalityとHonestyのあいだに

今の時代は決まりきった職種に限らず、ビジネス、テクノロジー、デザインといった横断的なドメイン知識が求められるという。 これはある種、機械作業的な労働に囚われていた多くの時間が、機械化・自動化などの移行によって、ようやく本当の意味での人間的な…

連載|リファラルマーケティングの罪とBest Friended Design

アプリやサービスのよくあるマーケティング施策として「あなたのコードから他の誰かが使ってくれたら、あなたにも相手にもこんな恩恵がありますよ」というのが最近は好きになれずに基本的に使っていない。 これは完全に個人的な感情の話なので、それ自体を否…