六〇〇万人の女性に支持される「クックパッド」というビジネス(上阪 徹) 読了

最近はなんだか自分にとってタイムリーな本ばかり読んでいる気もするけれど、特に狙ったわけでもなくこの本もそういうことになりそうです。
というのも、ちょうど「クックパッドの開発の裏側見せます in 名古屋」というイベントに参加する予定だったからです。
本を見つけて読み始めたのも、このイベントの情報を教えてもらったのもちょうど同じ時期だったので、タイミング良すぎるなーとは思いましたよ。
まぁでも、元々どちらも興味のあることだったことには変わりないわけです。イベントに関しては技術的な話でどこまでついていけるか分かりませんがね。少しでも自分を高い位置に触れさせる努力はしていくつもりです。


クックパッドは自分がそれこそ高校生の頃から知っているサイトで、その頃はまだまだ知られていなかったサイトだと思います(周りにPCをメチャメチャ使う人もそんなにいなかったしなぁ)。
私は小学4年のときに、母親に料理教室に通いたいと申し出たぐらい料理を作ることが好きだったので、家でPCをいじっていてクックパッドを見つけるのはあっという間でした。
ある程度社会のことやWebの開発のことを知り始めたのが最近だから、クックパッドなんかうまくいってると聞いて自分のことのように嬉しかったのと、それと同時にもっと知りたいと思い始めたのも昔の話ではないんです。
という、いつもの前置きはこれくらいにして内容について書いていきます。

良かった部分と好意的には思えなかった部分

今回読んだ本は、クックパッドの誕生する前の話から、誕生してすぐには上手くいかなかった時代の話、クックパッドが実現していること、実現したいことなどについて細かく書かれています。
正直な本の感想から言うと、とっても良かった部分と好意的には思えなかった部分があります。
先に好意的には思えなかった部分として思うことを言うと、本の導入部分、著者がクックパッドのことを知ってクックパッドのことを話す前の部分です。
これは本の構成上当然だとも言えるのかもしれないが、作者があまりにべた褒めしすぎてしつこいくらいな文章が並んでいるのがなんとも好きになれなれませんでした。
文章を書くのがへたくそな自分が言えた義理ではないのだけれど、ある程度興味を持って手に取っている読者に対して、過剰なまでの広告?推薦?はいかがなものだろうか?
それこそ、この本の中では広告のあり方についてすら書かれているのに、そのことを紹介する文章には少し残念な気持ちが残りました。
これはあくまでも私の感想なので、「そんなことはない」と言う人が私以外の全員だったとしても、ひとりはそう思った人がいたのは事実ですしね(面白いことに、本の中には1人1人の満足度を大切にするというようなことが書かれた部分もあります)。
もちろん、この好意的には思えなかった部分というのはクックパッドに対してのものではないです。事実これ以外のことに関しては、読んでいてほとんど(全てではない)良い内容だなぁと思えることばかりだったからです。

クックパッドができるまで

クックパッドができるまでの話についてはいろんな部分で参考になる面白い内容だったと思います。
社長の佐野さんが学生の頃、様々なことを(お金の絡むことも)やったけれど、「学生時代だと、すべてがイベントになってしまう」「社会を変えたいと思っていても、学生の遊び事で終わってしまう」という経験を経て、卒業後すぐに起業したというのは納得しました。
こういう本はいつも自分と照らし合わせながら読んでしまうけど、自分はそこまで考えていたかなぁと思い返し始めると恥ずかしくなるばかりですね。
それから、佐野さんは企業したは良いけれど何をしたらよいのか分からないという時期を過ごすのですが、この辺りがまた面白くて、「幸せとは何だ?」という話になってくるんです。
この話は少し前にも違う知人が話していたし、もちろん自分も思っていることなのだけれど、結局一番の幸せって言うのは他人を幸せにすることなんだというお話。
そこから過去の経緯などもあって食と結びつき、クックパッドの誕生となるわけですね。読んでいて、なんだかうまい話だなぁと思ってしまうのは、すぐに疑ってしまう私の悪いところなのかなぁ。

クックパッドができてから

私は昔から使っていた(サイトを見ていた)と言っても主婦ではないのでヘビーなユーザーではなかったのです。
なので、「レシピの数増えたなぁ」とか「ユーザー数増えたなぁ」とか「機能が良くなったなぁ」と感じたことはほとんどなかったんだけれど、実はサイトを立ち上げて数年はとっても苦労して、いろんなことを考えて改善してきたんだよーということが本書には書かれています。
以前から「毎日の料理を楽しみにする」ことを1つの信念にサービスづくりをしているというのは聞いているけど、本当に細やかに考えているんだなぁと改めて気づかされることが多くありました。
特に、ユーザーに対して正しく理解する(だいたいではなく、ほぼ完璧かつ論理的に)ということに関しては、私はまだまだ全然ダメだなぁと思わされましたよ。
文中にはPDCA(Plan, Do, Check, Action)という言葉も出てくるけど、ほとんどの場合Checkすらままならないサイトが多いんだろうなぁ。


クックパッドには「モノ作り三原則(無言実行、必ず値段をつける、無言語化)」というのを定めているらしいのだけれど、この中でも「無言語化」というのはAppleも実践している1つの重要な要素だと思います。
検索フォームに「検索するキーワードを入れてください」などと書かれているのは、親切ではなく、サービス提供者の単なる怠慢だとも言っている。
だからといって、何も書かずにユーザーがストレスなくサービスを受けられるかというのは非常に難しいのだけれど、そういった一つ一つの細かい気配りについて真剣に考え続けなければならないということを、忘れないようにしないといけないですね。


クックパッドは広告さえも「毎日の料理を楽しみにする」ということに当てはめて考えることで、ユーザーから支持を得ることができたというのも覚えておきたいところです。
この広告に関する部分の内容も非常に参考になることが多かったのだけれど、ここで先ほど「読んでいてほとんど(全てではない)良い内容だなぁと思えることばかり」の「全てではない」という理由が出てくる。
またしてもクックパッドに対する嫌悪ではないのだけれど、似たような事例が次から次へとこれでもかというくらいに出てくるところです。
まぁ、細かく見れば全部同じなどとは言えないのだけれど、読んでる方としては「それなんかさっきもそういう話なかったか?さっきのさっきもなかったか?」と思えて仕方がなかった。
こういう過剰なアピールが続くと、どうも疑って身構えてしまう人は私以外にもいると思うので気をつけないといけないなぁ(もちろん自分もそうしてることがあるかもしれないので、反面教師で…)。


クックパッドのことが気になって調べていて、実は最近知ったことが、収益の多くがマーケティング支援事業だと言うことです。
これに関しては、自分にはなかなか思いつけなかったことだったのかもと思い、非常に参考になりました。
ユーザーに関する様々な調査を自信のサイトを改善するために続けてきたけれど、今度はそれを広告主たちにも当てはめようという考えは非常に納得できました。
ここでいう広告主たちは、クックパッドのユーザーが広告主の消費者であるような存在で、その全てが幸せになれる方法を考えて導き出せたというのはなかなかできるモノじゃないと思いますよ(なんだかえらそうな言い方だけど…)。
それから「実は消費者は買いたいんです。買う目的や動機を探しているんです」という言葉が本の最後の方でささっと書かれているのですが、そうだよなぁとなぜか共感できるところがありました。
テレビなどのプッシュ型メディアからプル型の導線が増えてきたとは言え、そうは言っても自分からアクションを起こせない人っていると思うんです。
それに対して「じゃあやっぱりプッシュプッシュプッシュか」と言ったらそうではなくて、そんな人にも気軽にアクションを起こせそうなツールを提供してあげることが大事なのかなぁと思います。
時には「こういうのもどうかな?」という提案も良いけれど、過剰になりすぎない、ちょうど良い呼びかけができるサービスづくりを心がけておかないとダメですね。


本書は本当にいろいろな部分で本当に勉強になりました。