連載|猫の正義

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正義について考え、ずっと深く認識するようになったのは、機動戦士ガンダムを観てからで。

マイケル・サンデル氏の講義が日本のメディアで流れるずっと前のことだ。

CSSのように、世界には相対軸も絶対軸もあると考え語っていた、若かりし頃のやんちゃで荒削りなあの頃が、今となっては恥ずかしくも懐かしい。

普遍だと確信していた数学の定理や物理法則でさえ、思えば人間という尺度によって解釈された戯言のようなもので、「大発見だ!」と大騒ぎする人間という生き物に、猫は憐れみすら思うだろう。

人間には人間の、猫には猫の正義があり、それを分かち合うのには大きな壁がある。

猫にしてみれば「また人間がわけのわからないことを叫んでいる」ぐらいにしか思わないのだろう。

そもそも自分とは違う生き物を理解するなんてことは到底できない。それは過去には戻れないのと同じくらい当然だ。

けれど理解しようと努力することはできるだろう。

その先にゴールなんてものはないとわかっていても、それだけがあまりにも無力な人間にできる最後の力なんだろうよ。

少し気だるい空気をまといながらそう話す私に、猫はメシをくれとでも言わんばかりの視線で見つめてくるのだ。